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作戦サイクルなど機能するのか?

作戦サイクルなど機能するのか? Ver.2

日本の戦略的・地政学的位置取りを念頭に中国の軍事的脅威を素直に見つめる時、日本が被害状況下を想定して軍事作戦を準備しておく必要があると繰り返し述べてきました

しかし米軍は、予算的制約とイラク&アフガンでの疲弊から、対中国の新たな環境に十分に向き合えていません。有識者や専門家が指摘し、各種ウォーゲームの結果から明らかにもかかわらず、従来の「心地よい」戦い方から抜け出せずにいます

本記事ではその典型的一例として、米軍が20年以上も変わりなく行っている「作戦サイクル(ATOサイクル)」方式による作戦運用を取り上げ日本がその方式に盲従して現実を直視しない姿勢を嘆き、中国正面での作戦計画方式のあり方を考えます。もちろん完璧な代替案を提示できる段階にはありませんが、一石を投じるつもりで・・・


問題意識
●朝鮮戦争以来60年以上空襲を受けたことがなく、敵の遠方攻撃や防空能力を無視できたイラクやアフガンでの10年以上の戦いのイメージから抜け出ていない米軍は、中国のA2AD戦略が生み出す戦いの変化を十分組織として認識できていない。
●米国防省の諮問機関や外部専門家が指摘するように、米軍が作戦面で最も意識改革を求められているのは、相手から攻撃を受けない「聖域」での活動を前提とせず、自らの基地や装備が「被害を受ける前提」で作戦を考える姿勢である。

「被害状況下で訓練せよ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-10-23
「国防科学委員会の警告」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-10-1

●一方で、米国政治レベルの「アジア太平洋リバランス」政策(かけ声先行)を受け、中東からアジア太平洋に急なシフトを米軍は迫られているが、従来の作戦遂行パターンをイメージして動いている。現場レベルで特に顕著
●国防省のエアシーバトル推進室が昨年11月に整理した課題10項目も、この辺りの意識改革の必要性を訴え、危機感を持って対応を検討している。

「ASB推進室の取り組み」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-04 

(ご参考:課題10項目:6項目が被害対処を意識)
・Cross-Domain Operations Command-and-Control
・Undersea Warfare Supremacy
・Attack Operations to Defeat A2/AD
・War at Sea

・Active and Passive Defense
・Distributed Basing
・Contested ISR
・Contested Logistics and Sustainment
・Contested Cyberspace Operations
・Contested Space Operations


強制削減に直面する米軍の混乱
●元来保守的な性格を持つ軍事組織にとって、自由に行動できる環境から敵脅威の制約を受ける環境への対応だけでも大きな課題だが、これに加え、今は更に不透明性の高い国防予算の強制削減への対応も迫られている
●これら中国の脅威増大と予算削減に備えるため、大統領が発表のDSGを基に、国防省としてSCMRを行い、戦略的&優先事項を明確にしたアプローチを目指そうとしている

「SCMRの結果発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-01

●しかし現下の厳しい環境で各軍種が行っている方向性は、脅威の変化や新たな脅威対処の名を借りつつ、現在の組織内で力を持つ勢力に都合が良い、組織や職域防衛的な匂いを放っている
●米空軍によるF-35計画への極端な過保護政策しかり、米海軍による空母艦載無人偵察攻撃機UCLASSの要求性能議論の迷走しかりである。
●その他、米海軍が鳴り物入りで導入を開始し、アジア太平洋リバランスにおける「なけなし増強施策」の対象だった沿岸戦闘艦LCSの調達隻数を52から32隻まで削減するなど、目指すべき統合作戦の絵姿が揺らいでいる

「亡国のF-35」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/archive/c2302846744-1
「米海軍のNIFC-CA構想とは」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-26
「米艦艇をNIFC-CAで守る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-27


合理的な米軍の避難訓練と見えない日米共同
●中国のA2ADへの対処案で揺れている米軍だが、中国の弾道ミサイルや巡航ミサイルの脅威とその増強ぶりは十分に把握している。単純だがその数量で侮れない無人機や、米防副長官が通達を出して対処を訴えている電子戦能力にも危機感を抱いている。サイバーや宇宙戦能力もしかり
●従って「いざ有事」の際の避難計画や避難先の確保には取り掛かっている。これらの行動を同盟国の一員として非難する気持ちはさらさら無く、軍事的合理性に基いて強靭性を高めるため、着実に進めてほしいと願う

有事に備えた米軍の避難訓練
「18機の嘉手納F-18が避難訓練!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-23-1
「Wake島へ避難訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-04-1

グアム島基地の施設強化策
「グアムの抗たん性強化へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-30-1
「グアムで大量死傷者訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-08-1
「グアム基地を強固に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-12

米空軍戦力の分散訓練
「アジア版Checkered Flag」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-03-04
「テニアンで作戦準備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-05
「米と豪が被害想定演習を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-02

●同時に、米軍人の心情面や表面的な姿勢はともかく、推定5回にも及ぶ本格的な日米軍統合のIAMD演習(海軍大学がシナリオ担当の本格的シミュレーション)で、日本防衛の難しさが極めて難しくなっていることは十分認識されていると思われる。

「日米軍が統合でIAMD演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-22

●脇道にそれるが、今後のガイドライン見直しの細部議論で気になるのは、尖閣でのグレーゾーン事態に際し米側は「日本が正面に立ち、米側は後方支援」との姿勢を明確にするようだが、グレーゾーンから事態が拡大した際、米側が態勢を取れるのか?との疑問である。 うがった見方だが、グレー事態で戦力を一旦分散又は後退させたら、もう二度と戻る場所はないのでは・・との懸念である
●これは日本側から見た「懸念」だが、米軍はその流れを自然に利用し、軍事的合理性に基づき「日本から巧みに転進」を成功させるのかもしれない

「Front & Back Office概念で」→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-25

●そんな中でも日本が「F-35だけ防衛力整備」を継続する姿勢にはマイナスの感嘆だが、明々白々な戦闘機の重要性低下や「必要戦闘機数の算定根拠の不透明感」の中で、空しさを感じながら勤務している戦闘機操縦者以外の無念が胸に迫る


身近な問題「作戦サイクル」に目を向けると
(参考→http://www.jaaga.jp/jnakajima08b.html
2008年11月20日、航空自衛隊の運情部長 中島空将補はJAAGAとのOB団体で「米軍再編と航空自衛隊の部隊運用について」講演し、府中から横田への司令部の移動(脆弱性を増し、強靭性を低下させる愚策)を以下のように表現している

●「現在、米軍との共同作戦の実効性を高め、かつ総隊として対処すべき任務の多様化に対応するため、従来のように事態生起に対応し開設していたCOCを改め、米軍が実施している24時間恒常的に実施する作戦サイクル(ATOサイクル)を導入し、こうした活動を行うAOC(Air Operation Center)を総隊司令部に常時開設し機能強化を図る方向で検討をしている。そのモデルはCAOCC、ケニーHQ等である」
●COCは話の流れから現在の「総隊の作戦センター」を指すのだろう。CAOCCは、イラク戦争の際にカタールに設置された連合の統合作戦センターである

●問題はここで言及されている作戦サイクル(ATOサイクル)である。Wikipediaによると「ATO」とは、作戦センターで作成される空軍作戦を指揮する命令で、「24時間の飛行計画を定めたリスト」である。コールサイン、航空機タイプ、任務(CASや空中給油や目標攻撃等々)が記されたものである
●そして作戦サイクル(ATOサイクル)がその有効性を発揮したのは、20年以上前の湾岸戦争でクウェートを侵略したイラク軍を追い払う作戦からであり、IT技術を独占し、衛星通信を含めた精緻で妨害のないネットワーク環境を確立して維持できた環境下のみである。

●「ATO」とは、明日実施する作戦を少なくとも24時間前には決定し、それを各前線部隊に徹底するものである。これは自分たち友軍が「上から目線」で敵情を把握し、敵からの攻撃やそれへの対処を考える必要のない「聖域」で、作戦前日にお茶でも飲みながらじっくり策を練る手法である
●この「上から目線」な戦い方こそが、米軍の「脅威の変化を理解出来ていない」「過去の戦い方に囚われている」「研究者レベルの警告が生かされていない」状態を端的に表している


もう一度、冷静に考えよう
●米軍が作戦面で最も意識改革を求められているのは、相手から攻撃を受けない「聖域」での活動を前提とせず、自らの基地や装備が「被害を受ける前提」で作戦を考える姿勢である。
●もとより軍事組織は平時の意識改革が苦手である。更に米軍は今、強制的かつ将来の予見が困難な予算の削減に直面している。残念ながら本状況下、中国の急激な軍事力増強を前に、米軍の戦い方の変革は混迷の中にある

●また、エアシーバトル論とオフショア・コントロール論の論争で明らかになったように、対中国戦で中国本土への攻撃は一段高い判断を要するオプションである。つまり対中国の戦いは、作戦サイクルが念頭に置く「攻勢作戦」が中心とは考えにくい。むしろ受動的反撃作戦が中心になると考えるのが自然だろう

「ASB論VSオフショア・コントロール」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-24
「オフショア・コントロールを学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-03-13
「ASB批判に5つの反論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-17
「オフショア・バランシングを学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-27

●相手の猛烈な弾道/巡航ミサイル攻撃の被害に耐え、生き残ったISR情報を基に柔軟で臨機応変な反撃が求められるだろう。そしてその際、24時間の戦いを事前に固定する作戦サイクルのような「上から目線」な戦い方は、百害あって一利なし、である。
●わが国はどうか? 脅威の変化の最前線に位置し、その変化に日々直接接する立場にありながら、極めて鈍感である。「専守防衛」と「憲法9条」の日陰で育成されたことを言い訳に、いつしかその環境を組織防衛の「温床」に変え、厳冬の冬に布団から抜け出せない怠け者のように変化を避けている

「20年前を目指す航空自衛隊」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-03

●空軍操縦者が抱く過去の戦いへの憧れそのままに、航空自衛隊の戦闘機パイロットは、未だに20年前の米空軍の姿(湾岸戦争)を夢見て作戦サイクルにしがみ付いている。
●米軍の陰に隠れ、「温床」での生活で退化した戦術眼の背景には、現在保有する戦闘機を1機たりとも「無駄」だと言われないよう演出する戦闘機操縦者のDNAがあるが、更にさかのぼると根拠なき必要戦闘機数の算出とその数への固執がある


脅威の最前線にある日本が主導せよ
●作戦サイクルを否定しても、何らかの計画システムは必要だろう。しかしそれは「上から目線」や立派な作戦室から生み出されるものではないだろう。被害状況に応じ、作戦権限を段階的に前線組織に委任し、最後は独立戦闘まで想定した構想が必要だろう
●自らの基地や装備が「被害を受ける前提」に立てば、戦闘機中心の体制が如何に無力か自明であり、より粘り強くあるためにはどこに投資すべきかも自然と導かれるだろう。より一元的統制が難しい環境下で、何を重視して作戦するかの議論が求められる

●もちろん「夢の作戦サイクル」よりは効率性や有効性は低下するだろう。しかしそれが現実である。現実を直視してこそ、見えてくるものがある。
●予算の見通しもなく、現有戦力の大規模廃棄まで迫られている米軍に現実直視を求めるのは酷である。脅威に直面する日本が考えなければならない。「専守防衛」と「憲法9条」の下で培った「特異なまでに巧妙な阿吽の呼吸を活用した戦い」を進化させ、単純なマニュアルに昇華させる努力が求められる

●「上から目線」の戦いから「被害を覚悟した」戦いへの変化で米軍をリードし、このノウハウを持って日米共同軍事作戦や対中国多国籍軍作戦の「操舵室」で確固たる地位を確保し、極東や東アジアを知る国家として作戦をリードできる地位を目指すべきである。誰かが言っていた「活米」の概念もこの流れであろう
●巨大な大陸国家と島国の力関係は残念ながら明らかである。腹をくくってことに当たらないと、米戦略家に「台湾にさよならと言おう:Say Goodbye to Taiwan」(http://geopoli.exblog.jp/22525129/)と同列の論文を発表されかねない

●脅威の変化の最前線にある日本こそが変化を示し、その気概を示すべきである。世界の軍隊が抜けられない「しがらみ」や「ワンパターン」から脱却し、日本のアイデンティティーを打ち出し、アイディアで欧米アジアをリードすべきである。

●そしてその大前提に、「戦闘機だけに投資」&「戦闘機操縦者のみ優遇」組織からの脱却が必要である

CSBAによる最新のエアシーバトル解説
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-03-15

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